ダメは続くよどこまでも/映画【仁義の墓場】

映画【仁義の墓場】
監督:深作欣二

<あらすじ>
戦後の混乱期、河田組の石川力夫は山東会の賭場を襲い金を奪って逃走する。これを機に山東会と対立するが、石川らは山東会をあっさり壊滅させてしまい…。
<ジャンル>
バイオレンス・アクション

 

<レビュー>
渡哲也が腐っていく。
やくざ映画というと、「主人公が成長していくにつれて保守的な親分や組の体質に疑問を持ち、反抗し、徐々に新興勢力となっていく。
そして、破滅していく」というのが定石だが、この映画は違う。
渡哲也が、ダメになっていくのだ。
石川力夫(実在の人物)は最初から粗暴なキャラクターではある。
というか端的にいってくずだ。すぐキレる。すぐ犯す。だめだ。組長のハナ肇がだいぶまともに見える。問題児に手をやく校長先生の様にも見える。
なんどもいうが、渡がとにかくダメだ。
売春婦とヘロイン決めてセックスする場面なんて、「これが映画の主人公でいいのか」と本気で思ってしまう。
セピア色の画面のなか、女と並んでどろんとしている。釜ヶ崎の汚いドヤだ。すぐ隣で老人が位牌か何かに手を合わせている……。
『日本でいちばん悪い奴ら』での綾野剛のヤク中演技を思い出した。あれも相当救いようがなかった。

 

これはいわば「感情移入拒絶型」の映画だ。
まったくもって主人公に感情移入できない。むしろ、組長のハナ肇や、親友の梅宮辰夫に同情してしまう。
それがまた、クールでいいし、逆に伝わってくるものがある。
映画はとかく「感情移入できた/できなかった」という意見が語られがちだが、なんでもかんでも感情移入すればいいというわけではない。

 

「羊たちの沈黙、見たよ」
「どうだった?」
「最高に面白かったよ!」
「だよね!」
「あのダークな世界観にもうすっかりハマっちゃってさ」
「わかるわかる。ゾッとするよね」
「見てる間、もうずっと感情移入しちゃって。……レクター博士に」

 

こわいんだ。こんな友達がいると。
脳みそ食う奴に感情移入する友達だと、困る。
どうかクラリス(ジョディ・フォスター)に感情移入してくれ、と思う。
『冷たい熱帯魚』のでんでんしかり。ただ『ゴーン・ガール』の奥さんに感情移入する人はいるかもしれない。こわい。
ちょっと俯瞰というか、引いて見ているから分かることもある。
主人公の身になって泣けるとか怒るとか、そういうのではなく、石川力夫の(ある種、一貫した)人生全体で訴えかけてくるものがある。
それは力夫が「ある人物の血をぬぐってあげるシーン」や、「風船を見上げるシーン」などが折り重なって、あぶり出しの絵のようにじんわり浮かびあがってくる。
ような気がする。たぶん。

 

それでは、おやすみなさい。

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